役に立たない日々の日記

最近、あたらしく仕事を立ち上げるために奮闘中。日々の中で思うこと感じること見たことを綴ります。読書とお酒で構成された23歳

【狭き門 (アンドレ・ジッド著)】

今年は雪がよく降る1月中旬。

去年の春に読んだ本を思い出した。

 

こんなあらすじの物語

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物語の語り手であり主人公でもあるジェロームは、2歳年上の従姉であるアリサに恋心を抱く。アリサもまたジェロームを愛しているが、周囲の人々も両者が結ばれることに好意的であるにもかかわらず、結婚をためらう。神の国に憧れを持つ彼女は、最終的に地上での幸福を放棄し、ジェロームとの結婚をあきらめ、ついには命を落とす。

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狭き門 (新潮文庫)

 

変な先入観さえなければ、そんなに長い話ではないので1日もあれば読み返すところまで可能だろう。

ジェロームの幼少期から始まり、ジェロームの叔父の家にてアリサと出会う。アリサは母親の不倫によって男女の関係を悪いものだと思うようになり、ジェロームへの愛をすべて神に向けることになる。

 

物語にはアリサの妹、ジュリエットが対比的な存在として登場する。ただ、恋愛に関してはアリサよりも純粋だったかもしれない。アリサ同様、ジェロームへ恋心を抱き、ジェロームの話す外国語を聴いているだけで理解できるくらいに熱中していた。それでも姉の恋愛を心から応援し、自分は別の男性と結婚するのだ。

 

自己犠牲からではなく、自分から幸せをつかみにいった。これはジャンセニストなジェロームとアリサにはできなかった。幸せになることを拒み、神の国へ行くことしか救いを見いだせなかったアリサは、日記だけを残して孤独に隠れた。

 

わたしは解放と自由をこの物語のテーマとして捉えているが、それはジェロームとアリサのどちらにもなかったものだとも捉えている。

ジェロームはアリサの想いを尊重するあまり肝心なところで想いを伝えきれず自分に行動制限をかけ続ける、アリサはこの世に生をなした罪の中では自己犠牲こそが信仰だという思念に縛られ続けた。そして、自分の生きる道を自ら選んだジュリエットは相応な幸せをつかんだ。

 

 

著者であるアンドレ・ジッドはヨーロッパの厳格なキリスト教の教えに対して宗教からの解放を訴えていたため、著作物がローマ教皇庁によって禁書となっていた。

また、彼には妻があったが同性愛的性向でもあったため一度も性交渉をしていないとの話も残っているらしい。そのせいか、物語の中には、ジェロームの母親然り、アリサの母親然り、母性というものが全く感じられない。

 

叶わぬ想いを描いた恋愛小説に終わらない奥深さ。

 

なにごとも過剰すぎると毒になり自分を蝕まれていくということ。

 

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狭い門から入りなさい。滅びに至る門は大きく、その道は広いからです。そして、そこから入って行く者が多いのです。(新約聖書 マタイの福音書7章13節)

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いいことわるいこと

歳を重ねるごとに人はできることが増えて自由になるという人と歳を重ねるごとにできることは制限されるという人がいる。

 

前者は、年を重ねていく中で様々な経験を通して知識や知恵を身に着けることで、新しい価値観や発見、機会に出会うことができて楽しいという

 

後者は、年を重ねていくごとに様々な組織に所属したり現実を知っていくことで、いろんなことに縛り付けられ子供のころのように楽しめることはないという

 

子供のころは、毎日が遊びだった。かくれんぼや鬼ごっこ、缶蹴り、階段の高いところから飛び降りたり、友だちに膝カックンしたり、いたずらもたくさんした。そんな毎日が続くと信じていたし、早く大人になることを望んでもいた。

学校を上がるごとに遊びは変わって、自分でできることも行ける場所も増えた。大学生になってからは、新しい交友関係の中で新しい世界を知った。世界一周をする人もいれば、学生団体を立ち上げたり、企業にインターンシップをしたり、学生のうちにできる限りのことをしている人の情報がSNSを流れる度にどこか心細くなった。大学生活は人生最後の自由時間なんだと思ったりもした。

 

大人になる過程で少しずつ自由にはなるけど規制やルールも増えてくる。あきらめることが増えてくる。悪いことのダメージも大きくなる。辛い思いをたくさんしてやっとのことで幸せに出会える。

子どもの時に楽しかったことを大人になっても楽しめるわけではないだろう。楽しんで生きることを世間や周りの環境が簡単には許してくれないかもしれない。それでも、大人になっても自分というものが変わるわけではないと思う。笑い方や好みはきっと簡単には変わらない。何歳になっても同じような笑い方をするだろうし、幼心が出てくる時があるだろう。

 

今を生きることに躊躇して、今を生きることができているのか不安になる。

時間を惜しむことができるなら、時間を大切にすることができる。

 

大人になることがどういうことかなんて説明できないけれど、大人になっても自分は自分だと言うことはできる。昔よりも少しだけ落ち着きを知っただけで、少しだけ世の中のことを知っただけで、少しずつ無駄だと思うことを楽しむ能力を身に着けていくこと。

 

目の前の時間に不安を感じながらも

自分の成長を楽しみ、大人を楽しむ。

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成人式をはるか昔に感じつつ、

そんなことを考えながら大人になった私のたわ言。

【白鯨 (ハーマン・メルヴィル)】

【白鯨 (ハーマン・メルヴィル)】

 

2016年に「白鯨との闘い」が映画化されたこともあり、名前を聞いたことがある人はいるだろうが「白鯨」を読み切った人はどのくらいいるのだろう。

 

和訳が古いせいもあるが、内容が非常に男臭く、ひとつ話が進むごとに入る鯨の説明、最後の最後までなかなか姿を現さないモビィ・ディックに思わず挫折し、本を閉じてしまいたくなるような本で、わたしは和訳の読みにくさに3度も訳者の違う本を購入し、大学の4年間を費やした。

 

とはいえ、世界十大小説として名高い作品。

すべてを読み終えたときの恍惚感が延々と残る。

 

白鯨 モービィ・ディック 上 (講談社文芸文庫)

 

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時は19世紀後半。

欧米の捕鯨船団が世界の海を回り、捕鯨を行っていた。

物語の進行をするのは語り手であり鯨オタクのイシュメール。彼は捕鯨船に乗るために大捕鯨基地・アメリカ東部のナンタケットを訪れ、インディアンで銛打ちのクイークェグと出会う。二人は予言者の言葉を聞き流し、捕鯨船ピークォド号に乗り込むことになる。

 

二人が乗ったピークォド号船長のエイハブは、モビィ・ディックと呼ばれる白いマッコウクジラに片足を食いちぎられて以降、自身の片足を奪った「白鯨」に対する復讐心で海に出て、報復に執念を燃やす狂気で船員とともにモビィ・ディックへの報復を誓う。

 

「白鯨を追跡するというおぬしらの誓いに、おぬしらもしばられておるのだぞ。この老いぼれのエイハブは身もこころも、魂も肺臓も、そして生命(いのち)そのものも、その誓いにがんじがらめにしばられておる。」(八木敏雄訳『白鯨』岩波文庫 下巻253頁)

 

ピークォド号は、狂気のエイハブ船長をはじめ、エイハブと対比的な一等航海士スターバック、楽観的な二等航海士のスタッブ、三等航海士フラスク、銛打ちとして黒人やインディアン、そしてイシュメールが乗っており、多様な人種、多様な文化が入り乱れ、アメリカ合衆国のような船だ。

 

本書の終盤にてようやく、ピークォド号は太平洋でモビィ・ディックを発見し、追跡する。白鯨と死闘の末にエイハブは海底に引きずり込まれ、白鯨の攻撃によってピークォド号も船員とともに沈没する。イシュメールのみが生き残り、救命ブイにつかまり漂流していたところを他の捕鯨船に救出される。

 

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本書は作者であるハーマン・メルヴィルキリスト教的思想が影響しており、登場人物は全員、信仰を持っている。イシュメールをはじめとする大半の人物はキリスト教とであり、クィークェグにも自信の進行する神があり独特の儀式を行う描写がある。

 

エイハブ船長の名前は旧約聖書に登場する神を捨てたイスラエルの王アハブがもとになっている。「アハブは、彼以前のだれよりも主の目の前に悪を行なった。」(第一列王記16章)神を怒らし、神を恐れぬ人間として執拗なまでに白鯨に対する復讐心を燃やし、自らも縛りつけた生き方をする。

年代的に見ても19世紀後半はニーチェが「神は死んだ」と唱えた時期であるため、キリスト教の信仰心の薄れや疑問を現しているかのようにも考えられる。

また、主人公イシュメールの名の由来はアブラハムの子供イシュマエル。

 

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物語は、イシュメールの鯨の説明から始まり、上巻の後半にてようやく捕鯨船に乗ることになる。

見どころというか、最も目をひかれるのは物語に出てくる料理たち。

・小型だが多肉質のふとったハマグリに、くだいたビスケットと、潮豚の薄切りをまぜ、バターをたっぷりとかしこんでこくをつけ、塩と胡椒をしっかりきかせた逸品

・捕れたて鯨肉のステーキ

・鯨油で揚げた揚げパン

どれも文字を読んでいるだけなのに、美味しそうな香りが脳をよぎる。

 

内容はとにかく男臭く、男だけの群集劇とでもいうべきか、登場人物の人間性の統一感のなさが劇を進め、次第にエイハブの憎悪を中心にまとまっていく様が見物だ。

 

ラストの海底へと引きずり込まれるシーンでは、今までにない迫力とむなしさが漂う。 

 

回り道の多い本書ではあるが、読み進めていくことで鯨に関する知識が身についたり、捕鯨時代に思いをはせたりと、読みごたえは十分にある。

読み終えた後には、ぜひ「白鯨との闘い」も一見いただきたい。

 

 

【「心の時代」にモノを売る方法 (小阪 裕司著)】

2017年から起業・商売するにあたり調べた備忘録です。ここでは、どんなサービスや事業が求められていくのか、サービスとは関係ないようなことから核になる考えに近づいていきたいと思います。 

【本ブログの目次】

  • 僕らの考えるサービス・事業とは?
  • この一冊から考えました
  • 気になる点
  • まとめ

①僕らの考えるサービス・事業とは?

誰かに 楽しい+嬉しい=幸せを提供できる事業

 

定義が抽象的な表現という点を指摘されそうですが、

私としては、次に述べることがキーポイントだと考えています。

自分自身の生活を見直す機会と習慣を共有・共感できる事

なのではないかと考えています

この抽象的な表現から行動し、事業を磨いていきたいと思います。

 

②この一冊から考えました。

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著者紹介:小阪 裕司 氏

書籍名:「心の時代」にモノを売る方法

オラクルひと・しくみ研究所代表。九州大学客員教授静岡大学客員教授・中部大学客員教授・日本感性工学会理事。作家、コラムニスト、講演・セミナー講 師、企業サポートの会主宰、行政とのジョイントプログラムなどの活動を通じて、これからのビジネススタイルとその具体的な実践法を語り続ける。山口大学卒 (美学専攻)。大手小売業にて実務を経験後、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立、大手企業プロジェクトを手がける

 

③気になる点

私は、サービスやスポーツなどを通じて楽しいという体験しています。

しかし、再度、体験したいと思うサービスがあまりないと感じていました。

P.123 楽しいと嬉しいは異なる。

P.126 「便利さ」をもたらす挑戦から、嬉しいを生み出す冒険となった

上記2点は、自分の感情をうまく説明してくれた文章です。

私が気づいたポイントとしては、購入した後をイメージする1歩踏み込んだ体験が必要だった事です。これは、商品を購入した際に満足感がないなと感じ、その後商品を愛用している時に満足感を感じたからです。

④まとめと整理

私は、今回の着想から1つ整理しました。商品+体験がサービスの形になり消費者の前に現れます。これは、人がモノで満たされる部分が少なくなったことで、その時代にあわせた表現方法で共感を得ようとしているのだと思います。

 

参考にしたURL

【本の処方箋 】

“本には本の答えがある。”

 

本の処方箋という一風変わった本の診療所を1日だけ京都で開設した話である。

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12月4日は、日曜日の午後からに開催された“本の処方箋”

今回の診療所の場所は、大垣書店本店 ギャラリー4F 北大路駅6番出口降りてすぐ。

 

診療所としては、これから大人になる若者たちへ、今のあなたの”想い”が詰まった一冊に、メッセージを込めて、そして、今も変わらず何かに悩んでは立ち止まっているあなたには本の処方箋を受ける内容である。

 

目次について

  • 自己紹介(今回のゲストでもある西田氏)
  • 前半:本の処方箋と問診票&直観読みブックマーク
  • 後半:西田さんの過去から現在について
  • ハックツ:10代に届けたい本のシェア
  • 最後に

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(自己紹介)

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西田 卓司さん

ツルハシブックス~ジブン発掘本屋の劇団員。

人生のゴールデンウィークである20代を巻町(現西蒲区)で畑をやりながら過ごす。サンクチュアリ出版営業中に出会ったヴィレッジヴァンガード店長の一言に本屋さんの可能性を感じ、ツルハシブックスをオープン。現在は茨城県に移住しつつ、人生の悩みに本を処方する「本の処方箋」を不定期で開催している。

 

前半について(問診票)

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本の処方箋を受ける前に下記の内容を問診票を記入します。

かかりつけ医(いつも買っている本屋さん)

・最近読んでいる1冊

・もっとも自分の人生を変えた1冊

・最近、悩んでいること

記入ができれば、順番が呼ばれるまで、待機します。

 

いよいよ(本の処方箋)です。 

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本の処方箋は、西田さんとの1対1の面談形式である。

学校、仕事、プライベートなど悩みの種類は様々あり、

1人10分ほどの時間の中で自分自身の診断が進み、最後にスッキリしているのである。

 

少しだけ、その時のシーンを振り返る。

西田さん:問診票を見せてもらいますね.......

西田さん:人生を変えた本は●なんですね。

患者:そうなんです。転職やインターネットの可能性を知ったんです。それが起業するきっかけの1つにもなったんです。。。

西田さん: 最近の悩みが書いてますけど???

患者:そうです、仕事でも人を受け入れすぎて...パンクしたというか...

西田さん: ...ありますよね。そんな時は、●●を、どういう風に思ってたんですか?

 

このように西田さんと一緒に悩んでもらい...

そういえば、こういう書籍ありますよと処方してもらったのである。

 

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問診の中で、話した内容や状況を踏まえて、お互いの共感が生まれたときに1冊。

この1冊が処方箋となる。感情で表現するならば嬉しいである。

 

前半について(直観読みブックマーク)

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本の処方箋を受けている間、待っているメンバーで少しワークショップ

今回は、直観読みブックマーク

 

直観読みブックマークとは、http://tyokkannyomibookmarker.info/(引用元)

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実際にテーマを決めて、導き出されたブックマークたち。

直観だからこその楽しさがあります。

 

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本の処方箋イベントを彩ってくれたお菓子とコメッこの藤川さん

藤川さんのお菓子は、米粉の素材で作るお菓子である。

クッキーは、星:シナモン・丸:ジンジャー・木:抹茶・スマイル:プレーン

タルトは、知恵の象徴であるリンゴ。

どちらも珈琲と紅茶に会うのである。

 

(プログラムに沿って:後半)

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後半の部は、西田さんに、ツルハシブックス・ハックツについてお話を伺ったのである。

西田さんは、大学院卒業後にビール―メーカーに勤め、"〇〇ビール"をプロデュース。

その当時からある"想い"を抱きながら、営業に駆け巡る。

 

ある想いとは..."畑をしたい"

ビール会社を退社し....ある時に縁もあり、知合の子供の家庭教師をお願いされる事に...

 

その子の出会いが今後の人生の要素であることを現在から過去を振り返る1つの視点の持ち方やきっかけである事を聞く。

 

西田さんが、「当初は●●ようにしたいと考えていたが、実は、自分自身は、こうしたかったんだ」と俯瞰的に自分を見た時に、今の自分がやりたい事に気づいたとされる。

 

そこから....ツルハシブックスを誕生するのである。

少しテレビで放映された内容を。

「大人」が若い人たちに読んでもらいたいと寄贈した本を暗闇の中で10代が見つけるという一風変わった本屋さんである。

 

寄贈された本にはお薦めの理由などをつづった手書きのメッセージが添えられている。

 

参照:暗やみ本屋ハックツとは?

www.hakkutsu.info

 

10代に届けたい本の紹介とメッセージ記入

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生きてきた時間や経験を投影することもあり、真剣に考えメッセージを作成中。

これらのメッセージは、千林のハックツプロジェクトに寄贈され、大阪の千林の10代たちが出会うかもしれません。 

 

寄贈された書籍紹介

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最後に・・・

 

本という自分自身が好きであり・好意をいだく行動に、自分と向き合うキッカケが含んでいる。その機会を見つけて、自分自身を楽しませ、嬉しい気持ちにする方法や流れを体験してもいいのではないかと思います。そんな自分に対する人生の栄養の与え方を学んだ気がします。

 

 

 

 

【小川未明童話集 (小川未明著)】

心せわしい年の暮れ、この一年の自分の行いを振り返ってみよう。

 

なつかしいようでいて、あたらしいような

幼い頃の物語が今の自分を問いただしに来るような

大人になってから読み返すことをお勧めしたい本がある。

 

幼い頃に読み聞かせをされた本の一つ。

小川未明童話集』

小川未明童話集 (新潮文庫)

 

 

どの物語にも人間というものがうまく描かれている。

欲の深さ、強情さ、卑しさ、弱さ、儚さ

人の業を簡素に簡潔に問うてくる。

 

やさしく通り過ぎていく、言葉一つひとつに収まりきらない情景。

童話ではあるが、目をそらしたくなるような後ろめたさを感じる作品の美しさ。

 

答えの用意されていない物語。

読者ひとりひとりに託される解釈。

 

あたたかさの中にある冷たさ。

冷たさの中にあるあたたかさ。

 

大人になってからこそ読みたい童話

 

小川未明童話集 (新潮文庫)

 

小川未明童話集 (新潮文庫)

小川未明童話集 (新潮文庫)

 

 

【灯台へ (ヴァージニア・ウルフ著)】

枯葉舞い散る季節も終わるころ、年末の大掃除に向けてまずは本棚を整理してみる。

本の種類は様々だけど、やっぱり海外文学が本棚の大半を占拠している。

 

どれが好きかなんて聞かれても、どれもその時々の心情によるから、本に一番なんて言葉はないと思う。

今の気分で選ぶとしたら、これだろう。

季節の風が連れてくる感情を表してくれる。

 

灯台へ

灯台へ (岩波文庫)

 

ウルフはイギリス文学の代名詞ともいえる。

登場人物の心情や感情、場面ごとの情景を巧みな「言葉」で読み手に流し込む。

彼女の代表作は「ダロウェイ婦人」だとは思っているが、この作品も捨てがたい。

鋭い視点で緩やかに描く時間の流れ、柔らかな日差しを力強く表す情景。

 

【春が来ると庭の植木鉢は、風が運んだ草花も混じって、相変わらず鮮やかな花々を咲かせた。スミレが咲き、黄水仙が花開いた。しかし、昼の静けさや明るさには、夜の混沌や騒乱に劣らず、どこか不気味な気配があった。】

 

個人の感情を投影するがごとく表された一つひとつの「言葉」

【とても嬉しいので、自分の喜びをわずかでも誰かに持ち去られないように、ちょっと身構えて見せている。】

 

人間の心情と自然の情景を交互に、入り混じるように「言葉」を用いて、「言葉」の持つ可能性を最大限に引き出した作品。

季節の中で迷子になった心がこの作品で見つかるかもしれない。

 

灯台へ (岩波文庫)

 

灯台へ (岩波文庫)

灯台へ (岩波文庫)