【灯台へ (ヴァージニア・ウルフ著)】
枯葉舞い散る季節も終わるころ、年末の大掃除に向けてまずは本棚を整理してみる。
本の種類は様々だけど、やっぱり海外文学が本棚の大半を占拠している。
どれが好きかなんて聞かれても、どれもその時々の心情によるから、本に一番なんて言葉はないと思う。
今の気分で選ぶとしたら、これだろう。
季節の風が連れてくる感情を表してくれる。
『灯台へ』
ウルフはイギリス文学の代名詞ともいえる。
登場人物の心情や感情、場面ごとの情景を巧みな「言葉」で読み手に流し込む。
彼女の代表作は「ダロウェイ婦人」だとは思っているが、この作品も捨てがたい。
鋭い視点で緩やかに描く時間の流れ、柔らかな日差しを力強く表す情景。
【春が来ると庭の植木鉢は、風が運んだ草花も混じって、相変わらず鮮やかな花々を咲かせた。スミレが咲き、黄水仙が花開いた。しかし、昼の静けさや明るさには、夜の混沌や騒乱に劣らず、どこか不気味な気配があった。】
個人の感情を投影するがごとく表された一つひとつの「言葉」
【とても嬉しいので、自分の喜びをわずかでも誰かに持ち去られないように、ちょっと身構えて見せている。】
人間の心情と自然の情景を交互に、入り混じるように「言葉」を用いて、「言葉」の持つ可能性を最大限に引き出した作品。
季節の中で迷子になった心がこの作品で見つかるかもしれない。
- 作者: ヴァージニアウルフ,Virginia Woolf,御輿哲也
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2004/12/16
- メディア: 文庫
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